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WPA/ACBS vs wnt.の対立が新局面に

2024.12.17

米ビリヤードダイジェスト誌は法廷闘争の可能性も指摘

『BILLIARDS DIGEST』(ビリヤードダイジェスト)は、1978年の創刊以来、アメリカンプールを中心とした世界のビリヤード情報を現在も発信し続けている老舗雑誌。そして、ここで長年編集長を務めているマイク・パノッツォ氏は、今年アメリカのビリヤード統括組織である『BILLIARD CONGRESS OF AMERICA』(BCA)のホール・オブ・フェイム入りを果たすなど、メディアとしてのビリヤード普及と発展に対する貢献も認められた人物だ。

ビリヤードダイジェストは、46年に渡ってビリヤードを追い続けている

そんなビリヤードダイジェストは、昨年から始まったWPA/ACBSwnt.の問題についても、プレイヤーが不利益を被る対立は早期に解決すべきとの立場から度々情報を発信していたが、12月16日、オフィシャルフェイスブック上で、12月に起きた両者のやり取りについて、関係者から得た情報に基づく1つの記事を発表した。

それによると、12月12日に、wnt.の母体であり世界的なスポーツプロモート企業である『Matchroom』(マッチルーム)の法務顧問兼ディレクターであるジャイ・シン氏が、70名以上のwnt.プロ、プロモーター、関係団体に向けて以下の内容がメインとなったメールを送ったという。

「ハノイオープン後にWPAが課した選手出場停止処分は権限の乱用であり、12月19日までに『恣意的』な出場停止処分を解除するよう要求する。WPAが期日までに処分を解除しない場合、マッチルームは自社の権利と選手の権利を守るために必要なあらゆる措置を講じる権利を留保する」

さらに、ビリヤードダイジェストが複数の信頼できる情報筋から入手したシン氏のメールには、以下のスポーツ裁判に関する具体的な事例とこれに対する見解も記されていたという。

・『国際スケート連盟』(ISU)が、かつて所属するスケート選手が第三者が主催するイベントに参加することを禁じていたことによって起こった係争について、WPAの対応が類似していると指摘

・ISUのケースは、スポーツ統括団体(SGB)が、選手が認可されていないイベントに参加することをどの程度制限できるかを扱っているため、競争法に関して重要な事例

・ISUの訴訟では、非公認イベントへの参加で永久追放処分を受けた2人のスピードスケート選手がISUの裁定に異議を申し立て、欧州司法裁判所(CJEU)に提訴。2023年12月、CJEUはISUの規則が「EU法に違反する」と判断し、さらにISUの規則は「特に選手、消費者、観客に損害を与え、競争を制限することを目的としている」と述べた。

・CJEUはISUについて以下のように結論づけた。
— ISUは、国際スピードスケート競技の市場において支配的な地位を占めている。そのため、CJEUは、ISUが選手をISU以外のイベントから締め出すためにその影響力を行使することはできないと判断した。これは、選手の競技の自由を不当に制限し、新規参入者がイベントを主催することを妨げるためである。
— 選手の機会を制限し、競争を阻害するため、競争法(この場合は特にEU法)に違反している。このような制限は、第三者によるイベント主催者の市場参入を制限し、業界におけるイノベーションと競争を阻害する。
— 制限の正当な理由を提示していない。ISUは、スポーツの完全性と安全性を維持するために制裁措置が必要だと主張したが、裁判所は、規則が過度に制限的であり、これらの目的を達成するために必要な範囲を超えている。

 そして、このマッチルームのメールは、2025年の『ナインボール世界選手権』(サウジアラビア開催)の日程を要求してきたWPAへの回答として送られたものだという。モスコーニカップ開催中に送られてきたこのメールでWPAは、不可解な制裁申請要件を挙げ、7日以内の回答を求めており、これに対してシン氏は、wnt.関係者に向けたメールに以下のように記しているとのことだ。

「ナインボール世界選手権にはwnt.ランキング上位のプロ選手が出場し、WPAが2025年の選手権に出場する選手に対して出場停止処分を維持または発動しようとする試みは、ISUの判決を参考に、イベント権利譲渡契約(ERTA)の準拠法であるイングランドおよびウェールズの法律に基づき、直ちに拒否され、異議申し立てられることを、我々はWPAに明確に通知しました」

こうした経緯からビリヤードダイジェストは、
「WPAの最終目標は、ナインボール世界選手権の権利を取り戻すことだと長らく憶測をよんできたが、そのためにはマッチルームとのイベント契約違反が必要となる。マッチルーム・プールは2020年1月に同イベントの権利を「永久に」取得した。2024年には、賞金100万ドルの『WORLD POOL CHAMPIONSHIP』にwnt.ランキング上位100名の選手が出場し、公認団体であるWPAにはわずか4つのワイルドカード枠が与えられた。現在、wnt.上位100名の選手のほとんどがWPAイベントから出場停止処分を受けているため、マッチルームとWPAの間のイベント契約をめぐる綱引きが、両者の争点の中心となっているようだ」
 と見解を述べ「ビリヤード・ダイジェストはWPAに回答を求めている」と記事を結んでいる。

現在開催中の台北オープンについても、昨日お伝えした通りペナルティ条項は解除されていないため、通常なら自動的に非公認大会としてペナルティの対象となる。しかし、現在のところWPA/ACBS、主催者からもこの大会に関する発信はない状況で、その背景には以上のようなマッチルーム本体の動きが大きく関わっているようにも見える。

近年は中国と歩調を合わせながらヘイボール(チャイニーズエイトボール)のメジャー化を急速に推進し、カタールではテンボールのワールドカップを開催、さらに来年にWPBAと組んで女子のワールドエイトボールを開催することを発表したばかりのWPA。長らくワールドプールの中心であり続けるナインボールに関して、19日の期限までにどのような対応をするのか、それも含め、この話題については引き続き注目していく。

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