ウェブキューズはビリヤードの全てがわかる総合情報サイトです。

【フォーム編②】ビリヤードの土台はフォームにあり!

2025.03.11

栗林達プロに聞く基礎としての重要性とその役割

栗林プロはトッププロとして活躍を続けながらレッスンも行っている

一つのショットだけでなく、ゲームマネージメントや戦術の土台としてフォームは最重要と語るのは、2005年の『日本プロポケットビリヤード連盟』(JPBA)入り以来、常に日本のトップランカーとして国内外で活躍を続けてきた栗林達プロ。ここでは、自身のフォーム論をベースに基本となるフォームの重要性と考えるべきポイントを伺った(CUE’S2020年9月号『フォーム大改造計画!』より)。

基礎を作り、積み上げる

――早速ですが、改めて栗林プロはビリヤードの「フォーム」をどのように捉えていますか?
栗 もともと僕は大工だったので、建築に例えると、フォームは「基礎」、要するに土台なんです。これがしっかりしてないと、家が建てられなかったり、地震が来たら倒壊してしまう危険もあります。逆に、頑丈な基礎、さらに深い基礎があるほど、上に大きくて高い建物が建てられる。ビリヤードで言えば、フォームがしっかりしていることで、成長できる幅がどんどん大きくなる。フォームはそれくらい大事なものだと考えています。

――いつ頃からそのように考えるようになったんでしょう。
栗 プロになって本当の意味でフォームがものすごく大事だなと思ったのは、実は今から5年前くらいです。

――意外に最近なんですね。
栗 プロ入りして10年ほどは、手首の形、グリップ、肘の形や向き、足の形だったりと、各部分をいろいろ変えてきましたけど、結局土台が定まることなく過ごしていました。

――考えてはいたけど、それは細部への意識だった。
栗 そうです。それでも結果が出ている時もあったんですが、それはたまたまであって、実際に自分が狙った通りに球を入れているかというとそうじゃなかった。言ってみれば、自分に嘘をついてるような感じでした。試合ですごい難球を決めて「ナイスショット!」と言われるんですけど、自分自身では確信はなくて「しっかり1点を狙えているのか?」「きちんとポケットの真ん中に入れられたのか?」と自分に対して疑問を抱いていました。

――それが変わったのはどんなきっかけだったんですか?
栗 レッスンを始めたことは大きかったですね。たくさんの方にアドバイスをしていく中で、細部だけではない、フォームの根本的なポイントが見えてきて、それを自分にもフィードバックして「こういう風にやってみたら、こう体を作ったらどうだろう」と考えるようになりました。現在70名くらいレッスン生がいるんですが、その方々にレッスンしていく中でもフォームの重要性は日々痛感しています。そのおかげもあって、今の自分のフォームはかなり「ハマっている」感じがしています。

――具体的にはどんな状態なんでしょう。
栗 自分の土台がしっかり作れている分、普段の練習でも、1球撞く度に、悪い所や何か間違っている部分にすぐに気付くことができます。部分部分でフォームを細かく変えていると、どこが原因なのかがわかりにくい。そういう意味でも、フォームという土台をしっかりと作った上で練習をすることで、どのレベルのプレイヤーであっても上達が早くなると思います。
――栗林プロはトッププロとしての土台が基になっている訳ですが、土台はレベルによっても変わってきますか?
栗 そう思います。まず基礎が小さい土地には小さな建物を建てますが、それがCクラスの方。Bクラスになれば、幾つか部屋を増やしましょうということで、基礎を新しく組み替えて作っていく。さらにそこから深い基礎を作って、ビルやマンションを建てましょう、という具合に変わっていきます。このように常に土台を意識して作り上げていくことで、上に積み上げるものも大きくなります。このようにフォームに対する捉え方が変わり進化していくことで、自分の骨格、筋力、身体の状態に合ったフォームを作っていけるようになる。人それぞれにその道筋は変わりますが、それがフォームというものだと思います。まずは土台を作ること、それができれば成長速度はかなりアップするという考え方です。

写真上から、栗林プロの基本となるフォーム、上撞点を撞く時のフォーム、下撞点を撞く時のフォーム

狙いの方向という「矢印」

――ではその土台について具体的にお話を伺っていきたいと思います。
栗 フォームを分解して詳しく見ていった時、まず上半身と下半身があり、基礎となるのは下半身と考えています。例えば普通に撞く時でも試合でも、お店や会場によって、テーブルの高さや、レールの形、床の状態などが様々に違っています。その時にテーブルに対してキューが平行になることを皆さん心がけていると思いますが、ホームのテーブルと同じようにいつも通りのフォームで構えた時に、テーブルが低ければキューに角度が付くし、高ければキューはいつもよりレベルに近付いてアッパースイング気味になったりします。これはすでに土台が変わっているということです。

――下半身がさらに基礎になるということですね。
栗 そうです。建築で例えると、傾斜地には斜めの基礎を作って水平を取り、その上に建物を作ります。その基礎にあたるのが下半身、足の部分で、建物が上半身ということです。上半身をしっかりと維持するためには丈夫で安定した下半身が必要となります。下が揺れれば当然上も安定しないという考えです。

――なるほど。
栗 キューに角度を付けて撞きたいという時、上半身の細部も当然変わりますが、それに対して、基礎となる下半身も、上半身が安定するように構える。このように考えると、おそらくフォームには、その時のショットの状況によってたくさんのバリエーションがある、ということになります。それに対して基礎も変えていく、という感覚で僕は構えています。
――上半身という建物についてはどのように捉えていますか?
栗 高さや勾配の違う色々な土地に、同じ建物を建てる感覚です。テーブルが低ければ膝は曲がるだろうし、高ければ棒立ちになりますが、上半身は常にテーブル上の同じ場所に持ってくるように構える。いつもと違う感覚になるかもしれませんが、その時の上半身は変わっていないので、同じ動作でプレーすることができて、安定感も増すと思っています。フォームで重要なのは、ターゲットに対して、狙いの方向という「矢印」を正確に合わせることで、その矢印はショット毎に1つの方向しかないんじゃないかと考えています。そこに正確に向かえるように構える、それがフォームの役割です。

ページトップへ
×

― ビリヤード関連組織・団体 ―