ナインボール世界王者は再び海を渡る【後編】
高橋邦彦の挑戦は終わらない
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写真提供:#Louis陸Photography
「まあ、あと25回くらい行けば1回は勝てるんとちゃいますか(笑)」
ハノイオープンを17位で終えた2024年10月11日、高橋邦彦は、現地でこれからの活動に関するミーティングを終えた直後、その日のうちに深夜便に飛び乗り12日早朝に帰国。そのまま『グランプリイースト第5戦』の関東予選に向かい試合開始5分前に会場に到着後、丸岡良輔、嶋野聖大を下して決勝トーナメントに進出。
明けて13日、すでに予定を入れていたアマチュアイベントの調整をした後、高橋は決勝トーナメント会場である埼玉県志木市の『WIND』に姿を現した。冒頭の言葉は、この時久しぶりに直接言葉を交わし、海外戦の印象や、ハノイオープンでの戦いなどを聞いた時に高橋が発したものだ。
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●高橋邦彦出場海外戦(2024年)
10月1日〜4日:PERI 9-BALL OPEN 2024(ベトナム・wnt.)/193位タイ
10月8日〜13日:The Mansion Sport Hanoi Open Pool Championship(ベトナム・wnt.)/65位タイ
12月16日〜18日:3rd Universal Chinese Taipei Open(台湾・wnt.)/17位タイ
ベトナム2連戦に出場した高橋は、1戦目の『PERI 9-BALL OPEN 2024』では、国内とは全く違うコンディションとレベルアップ著しい海外プレイヤーとの戦いに苦戦し全く納得いかない内容だったが、『The Mansion Sport Hanoi Open Pool Championship』ではある程度のアジャストができたことで敗者最終戦まで進み、ある程度自身の戦いができた試合もあったという。そして最後の遠征となった12月の「3rd Universal Chinese Taipei Open』では、ヒルヒルの激闘の末に敗れたベスト32戦では「完全にガス欠」になったものの、日本勢最高位の17位タイの成績を残した(※記事に誤りがありましたので訂正いたしました)。
「昔に比べて海外戦は遥かにレベルアップしてました。テーブルはポケットが渋くて、コンディションも様々、その中で入れるし守りもできるし、プレイヤーが皆強い。これは国内とは全く違う環境やから、経験して慣れないと戦えないです。やっぱり行かなわからんし、そこで強い奴らと戦って勝たないとチャンスをものにできないです。今回は久々でしんどい部分もありましたけど、やっぱり海外戦はめちゃくちゃ楽しいです」
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そしてこの日の高橋は、強行軍となったスケジュールにも関わらず、1回戦でここまでグランプリイースト3勝と圧倒的な強さを見せてきた羅立文を撃破し、準々決勝でも松田渉に快勝してベスト4に進み、準決勝で杉山功起に敗れたものの、グランプリイーストでは自身5年ぶりとなる3位タイでフィニッシュ。特に羅を下した試合は、高橋が纏うオーラと高い技術が精密機械を微妙に狂わせる、世界王者の戦いぶりだった。
年が明けて1月下旬、関西オープンの直前に高橋に会い、今年から本格的にスタートする新たな活動のことやツアーの予定などを聞く機会があった。そしてその場では改めて、これまでの海外挑戦のエピソードからその時の想い、現在海外に挑戦している後輩プレイヤー達に対するエールなどを語ってくれた。
「今年はまだWPAもwnt.も海外戦のスケジュールがあまり出てないんで、これから考えることになりますけど、アジア圏でもたくさん試合があるだろうから、飛行機は苦手でしんどいですけど、できるだけ行きたいです。今の世界のトップ連中は相当強い。でもアベレージでは負けるけど、技術では負けてないし一発勝負なら勝てないとは思わないです。海外で戦うならそのつもりで行かないと意味がないです。一緒に行ってる後輩達にはそう言ってますし、特に若い子らはそういう気持ちを持って挑戦してほしいです」
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昨年の遠征ではベトナムでも台湾でも世界王者としてリスペクトをもって迎えられた高橋邦彦は2025年シーズン、さらに高いモチベーションと、ジャパンプールを代表するプロプレイヤーとしての矜持を携えて、国内外のトーナメントに向かっていく。