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日本のジュニアが集い熱く燃え上がる!

2024.11.18

第11回日本学生ナインボール選手権大会@尼崎・あましんアルカイックホール・オクト

左から高校大学生の部優勝・織田賢人、小中学生の部優勝・栗林宥。後ろは公益社団法人日本ビリヤード協会(NBA)南部利文理事長

国内ポケットビリヤードの聖地的存在である『あましんアルカイックホール・オクト』。ここにテーブル16台が整然と並び、両側をひな壇型の椅子が並ぶ、まるで盆地のようなステージだ。天井の大きなサークル型の照明も、ビリヤードファンの間ではお馴染みの絵。

ここで全日本選手権に先駆けて『日本学生ナインボール選手権(学生NB選手権)』が開催されるようになったのは2017年の第4回大会から。この時、高校大学の部(高大)は高校生だった杉山功起(現JPBA)が、小中学生の部(小中)は中学生であった村松勇志(現強豪アマ)が制していて、ジュニア世代にとって7年という歳月の速さを感じるところ。

そんな学生NB選手権が今年も11月17日(日)に聖地で開催された。今年は高大、小中の部ともに定員に到達しなかったが、「絶対に参加した方がいい」と感じる素晴らしい雰囲気であったので、この大会の魅力を交えながら結果をお届けしたい。

小中学生の部の出場者達

まず小中は総じてプレーがスピーディで無駄がない。その上、動作もジャッジも速い。さらに大きな声で挨拶が出来る選手が多いのは、家族やお店の人が指導に力を入れていることが窺えた。舞台に負けないスポーツマンシップに競技の未来に光が見えた思いだ。身長がまだ足りずラックを組むために踏み台を用意している選手や、レストを多用せざるを得ない小学生も少なくなく、真のジュニアたちは会場から微笑ましい応援を受けていた。

そしてリーグ戦で上位成績を残した4名が準決勝に進出を果たし、ここで栗林宥が三浦蒼流との小学生対決をヒルヒルで制して、中学1年の藤田万葉は北海道の小学6年生である坂本美月を破って、それぞれ決勝戦進出を決めた。

小中学生の部準優勝・藤田万葉

ファーストラックで①から8球取り切りを決めた藤田に対して、次ラックは栗林が⑦から2球を取って1-1に。第3ラックは栗林が⑨を穴前に残して藤田が2-1でリーチをかけるが、第4ラックの⑨は栗林が沈めてヒルヒルに突入。

そして最終ラックはドラマティックな結末に。取り切り体勢に入った栗林が⑦をわずかに逸らして穴前に残すもブラインドで、ツークッションから狙った藤田がドンピシャ過ぎた故の後追いスクラッチ。⑧でフリーボールを得た栗林は、手球の位置を定めた15秒後にはゲームボールを沈め初優勝を飾った。

栗林宥の夢はジョシュア・フィラーのような選手になること

こうして誕生した新チャンピオンは、ご存知の方も多いと思うが栗林達・美幸夫妻(ともにJPBA)の子息。よくサラブレッドと評されるが、昨夏からビリヤードを始めて歴1年と少しでこのレベルに到達しているのは、両親から「いいとこ取り」したとしか思えない域。プレーは超速だが雑ではない点も特筆。「夢みたいです」と優勝を喜んだ後、将来の夢を尋ねると「(ジョシュア・)フィラーみたいな選手になること」と、叶えてくれそうで期待を持たせ周囲に夢を見せてくれる点もスターの素質か。一方、あと一歩だった藤田は「昨年の3位から上にいけたことはまずは良かった」とあと2度チャンスがある小中制覇に意欲を見せる。さらに「この最高の舞台でプレー出来て幸せです」と爽やかに締めてくれた。

高校大学生の部の出場者達

さて、本大会の最強部門である高大。こちらは前年王者の織田賢人と金澤蒼生(昨年は3位)という、ズバ抜けた本命格のスーパースターが2人出場。金澤は予選をゼロ封3連勝で決勝シングル(ベスト8)に進出すると、さらに完封記録を5まで伸ばして決勝戦へ。一方の織田も予選の勝者最終ではサラブレッド・増田薫にヒルヒルまで追い込まれたが、この試合を除くとすべて1点以下に抑えてのファイナル進出。前日練習に訪れたプロたちも見守る中で注目の決勝戦が始まった。

高校大学生の部準優勝・金沢蒼生

第1ラックはブレイク権を得た金澤が取り出しでセーフティを決め、織田がツークッションから当てるもオープンとなり金澤が先行。第2ラックを逆にセーフティで金澤からファウルを奪って1-1イーブンに戻した織田はブレイク3個インからナイスマスワリで逆転に成功。しかし次ラックは④を微妙に隠してしまい、ジャンプで攻めるも惜しくも決まらず、金澤がバンクショットからつないで2-2のイーブンに戻した。

そしてゲームは終盤に入り、金澤は取り出しの①を沈めるが②が完全に隠れてセーフを取ることが出来ず。ここから織田が7球取り切りでリーチをかけると、次ラックはブレイク3個インから鮮やかなマスワリで大会連覇を決めた。

織田は全日本選手権でもステージ2に進出

「蒼生君は一番のライバルなので、素直に嬉しいです」と安堵の表情を見せた織田。来年が最後の年になるので、当然ながら三連覇に意欲を燃やすところだろう。それを察してか「来年は阻止します」とリップサービスを繰り出す金澤。この2人ほど高いレベルで切磋琢磨する高校生は間違いなく日本で初めてのこと。揃って2人は翌日から行われる全日本選手権にもエントリーをしているので、こちらでも活躍が大いに期待される。

閉会式では大会を熱心に観戦していたNBAの南部利文理事長から優勝者への賛辞とともに、全出場者を労う言葉が贈られた。勝敗に関係なく、スポーツマンシップにのっとって戦った選手全員が輝いて、大きな収穫を得たであろう大会として成功を収めた本大会だった。

小中学生の部ベスト4。左から3位タイ・坂本美月、優勝・栗林宥、準優勝・藤田万葉、3位タイ・三浦蒼流

高校大学生の部ベスト4。左から3位タイ・田中樹、優勝・織田賢人、準優勝金沢蒼生、3位タイ・熊木達哉

過去にJPBA1期生たちが昭和の後半頃に「これからは玉突きではなくキュースポーツの時代へ」と語り合っていた、という話を聞いたことがある。令和6年。キュースポーツとして進化が加速している。参加者の皆さん、感動をありがとうございました。

Akira TAKATA

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