ウェブキューズはビリヤードの全てがわかる総合情報サイトです。

話題ずくめの西GPを北谷好宏が制す!

2024.08.12

グランプリウェスト第4戦@大阪・DRAGON

北谷好宏はこれで公式戦通算15勝目

8月11日の日曜日。大阪市東成区の『DRAGON』(予選は市内7店舗併用)において、『西日本グランプリ(西GP)第4戦』が開催された。今回は話題の多い西GPであったので、その話題群から順にたどってみたい。
まず決勝の舞台となった『DRAGON』。観客席常設で特設さながらのメインテーブルは豪奢の一言で、更に店内の隅々にいたるまで特別感を演出。またフードメニューも「美味しいと聞いてきたので」と、尋常でない量のオーダーが入っていて、店名に謳う『BILLIARDS SUPER ARENA & CAFE』の看板に偽りなし。

決勝会場となった『DRAGON』

また西GPの大阪開催は6年ぶりということもあってか、地元大阪のビリヤードファンを中心に大勢のギャラリーが訪れ、観戦を楽しみつつビリヤード愛好家同士のコミュニケーションも活発に行われていた。

そして西GP第2戦では揃ってベスト8入りを果たした織田賢人と金澤蒼生の高2コンビも参戦したが、今回は初戦でプロの壁に阻まれる結果に。それに代わって気を吐いたのが関西成人アマチュア陣。奮闘が光り決勝ベスト16に関西のアマチュア選手が4人も残る大奮闘。(詳細は後述)

またフォーマットでも新たな試みが行われ、ベスト16以降は『ナインオンフット、ブレイクボックス』という国際水準のルールを初採用。これはナインボールを「別物」の競技に変えるほどの影響があり、特にメイン台(アリーナテーブル)のタイトなコンディションが加わると、多くのプレイヤーにとって「マスワリは無縁」ほどに難しくなっていた。

肝心の試合は前出のアマチュア4人と西日本の新旧プロが10名が決勝16に残り、ここに前回優勝シードの竹中寛と開催店シードの飯間智也が加わり決戦の火蓋が切って落とされた。あらためてアマチュア選手の動向を追いかけると、ここで植田幸司(千本)と田中裕也(ナイン)がそれぞれ北谷好宏、木原弘貴の九州実力派プロに阻まれて快進撃は終了となったが、久川直哉(セクションエイト)と立花成司(マグスミノエ)は、宮谷晃司と弘田勝彦のプロを相手に揃って後半に連取を決めてベスト8進出を果たした。

3位タイ・久川直哉

続くベスト8でも久川は竹中を破る金星を決めて準決勝に駒を進める。久川は2006年に『関西オープン』で準優勝という輝かしい戦績を持つ実力者だ。立花はホームの飯間に敗れて5位タイフィニッシュとなるも、今春の『球聖戦A級』で準決勝まで進んだ安定感を随所で披露していた。また北谷と木原の九州コンビの勢いも止まらず、北谷は杉原匡を完封で、木原は四国のベテラン・青山和弘を相手に逆転勝利(7-5)を収めた。

3位タイ・木原弘貴

頂点まであと2つ。しかしナインオンフットのブレイクで形を作るのは容易ではなく、さらに厳しめのポケットも影響して選手たちは気軽に走れる状況にはなく消耗戦が繰り広げられている。ここで北谷が総合力の高さを見せスコア的にゲームを支配し、2戦連続の完封勝利を決め、前戦に続くファイナル進出を決めた。これは今年の4戦中3回目という快挙でもある。

敗れた久川もチャンスで果敢トライは重ねたが、ルールとコンディショの前に新たな課題を持ち帰ることとなったのではないだろうか。一方で木原も上手さと強さをキラリと光らせてきたが、ジャパンオープン2連覇中の飯間を相手にゲームをひっくり返すには至らず。こうして北谷好宏と飯間智也の決勝戦に。実は2人がファイナルで対戦をするのは初。

準優勝・飯間智也

北谷のブレイクで始まった決勝戦は、序盤で綱引きの様相を呈したが、流れをつかんだ飯間が天下一品のストロークから繰り出すショットでテーブルを支配して6-2のスコアでリーチをかける。そして第9ラック残り2球の場面で飯間が狙った⑦が僅か厚く入り、さらに手球がスクラッチという望外の結果となり6-3。

「これで流れが変わった」とは決して言えないが、①をサイドポケットに狙うブレイクがかみ合ってきた北谷にあきらめの色は微塵もなく、対する飯間もショット精度でプレッシャーをかけていき、開始から1時間を過ぎても観客が誰1人動かない文字通りの「激闘」に。特にセーフティ合戦への拍手が多く、キックショットとジャンプショットの応酬も見応えあるゲームとなり、マスワリも交えて追い上げた北谷が遂にヒルヒルに追いついた。

ラストラックも北谷取り出し②から白熱の攻防劇を演じて、これを制した飯間だったがナインオンフットならではの難解な配置に熟考の末に④で守りを選択した。微妙に攻められなくもない配置だが、まさに「自己責任」の配置。これに対して北谷も熟考を重ねた末に攻める選択をして見事に決めた。次の⑤も判断に迷った様子だったが、再びシュートを選んで成功させると遂に残り4球で景色が開けた。

北谷は飯間との総力戦を大逆転で制した

希に見る総力戦は両選手の技術と知識をすべて注ぎ込み、相当な精神力と体力を削り取ったと見受けられた。史上に残るであろう好ゲームは1時間50分に及ぶゲームに席を外す間もなく。「とにかく嬉しいです」と、土俵際から踏ん張り続けて獲得した優勝を喜んだ北谷。これで北谷は公式戦通算15勝に到達した。

ルールとコンディション。この変化によって新しい感動と発見を生み出した今大会。西GP第5戦は再び佐賀を舞台に9月に開催される予定だ。その前にジャパンオープンが開催され、そこには飯間の大会史上初となる3連勝が懸かっている。確率的には実現不可能な記録とされているが、それだけに達成した時のバリューも無限大。北谷、竹中が西GPのタイトルを取り合っている西日本。しかしスタープレイヤーは2人だけではない。今回の飯間や木原のような30代も層が厚い。残るは平成生まれの台頭だけか。今後も要注目だ。

Akira TAKATA

ページトップへ
×