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World Top Interview special アール・ストリックランド

2024.05.17

最終回 トッププロはヒーローになるべきなんだ

同時代を生き、数々の激闘を繰り広げてきたフィリピンのエフレン・レイズとならび、史上最高のナインボールプレイヤーの一人とされているアール・ストリックランド。

今回のWorld Top Interview specialは、今もなおトーナメントでプレーし続けるストリックランドが、『Matchroom Pool』(マッチルームプール)代表のエミリー・フレイザーを聞き手に、ビリヤードを始めたきっかけからプロとしてのあり方までを赤裸々に語った興味深いポッドキャスト番組を翻訳・再構成。いよいよ最終回となる今回は、ストリックランドのビリヤードに対する熱い想いが爆発する。

●トッププロはヒーローになるべきなんだ

F:アール・ストリックランドの今後はどんな感じですか?
S:ジェイフラワーという中国のキューメーカーと契約したんだ。今後もトーナメントには出たいと思っているよ。モスコーニカップにももう一度選ばれたいね。そのためにはイギリスやヨーロッパを行ったり来たりしないといけないからちょっと大変だけど。トレーニングしながら思ってたんだけど、なんでマッチルームはモスコー二カップのヨーロッパチームとフィリピンでチーム作って対戦させないのかなって。まあフィリピンには勝てないだろうけど。

F:レイズがキャプテンのチームアジア対、ストリックランドがキャプテンのアメリカチームと対戦したらって想像してみてくださいよ。
S:私たちにも勝ち目はないね(笑)。

F:もし今後もう一つ、世界選手権、モスコー二カップ、US Open、などのタイトルを取れるとしたら何が欲しいですか?
S:今あげたものは無理だね。世界選手権で優勝するのは無理だよ。オープントーナメントでもね。でも一つだけ言えることは、もし毎回TVテーブルで試合させてくれるならチャンスはあるかもね。なぜならテーブルのコンディションが私好みだからね。他のテーブルは湿っぽくて冷たいのでコンディションを読むのが難しいんだよ。私は今回のトーナメントで、女性プレイヤー(※台湾の周婕妤)と、シェーン(・バンボーニング)が負けたテーブルで試合をしたけど、そのテーブルのコンディションががとても奇妙だったので、上手くプレーできなかった。私の対戦相手の彼女も同じく出来てなくって、彼女が勝ってもおかしくない試合だったよ。シェーンが負けた理由は、そのテーブルがテレビ用のテーブルに適していなかったからだよ。で、何の話だったっけ?

F:もう一つ達成したいことです(笑)。
S:ああ、一つだけ達成したいことがあるよ。もう一度モスコーニカップに出場して勝ちたい。最後に出場した2022年に勝てていれば良かったんだけどね。チームメイトがあの試合でミスを連発したのには驚いたよ。スカイラー(・ウッドワード)が簡単なボールをコーナーに外したし、それから簡単な⑧ボールをミスした人もいた。あのボールを私が外すならわかるけど。本当に、最後にもう一度勝てていたら素晴らしいことだっただろう。次の1年または2年で何が起こるかわからないけど、もしもっと待っていたら、出場する機会は無いだろうね。私の体は持たないと思うよ。私はこの体でたくさんのことをやってきた。ゴルフ、テニス、腹筋……。特に腹筋は億を数えるほどやったよ。もしこれをやっていなかったら、おそらくお腹が大きく膨らんでいただろうね。

F:ビリヤードは?
S:ビリヤードは毎日6〜8時間。ビリヤードは飽きない。今は昔よりもっとプレーしてるよ。だけど、65歳、70歳とかになったら無理だろうね。でも、私はとても素晴らしい人間。私は55歳でドイツマスターズを制覇した。他の誰もドイツでドイツマスターズを55歳で制覇することはないだろうね。スピーチでも「55歳でこのトーナメントを制するのを見ることはないだろう」と言ったよ。私がトーナメントで対戦した全ての選手は私よりも30歳以上若かった。トーナメントで対戦した全ての選手だよ。でも、できることなら私はメジャーで勝ちたいよ。そうだな、USオープンで勝ちたい。もう一度世界大会を制覇したい。次の大会で特例をもらえる?

F:ワイルドカード?
S:そう。私は特例を受けるべきだよ。世界選手権で3度優勝してるんだから。私がプレーする気がなくなるまで、特例にするべきだよ。ゴルフではそうなっている。もちろん、年を取りすぎてやめることもあるけど、ゴルフでは主催者側が止めることはないよ。特例を与えてくれれば、ワイルドカードでプレーするよ。本当にできると思うし、私のように全てのトーナメントを制覇している者には引退するまで特例を与えるべきさ。そして、私が電話をかけて次の大会に出場したいと言ったら、私にはスポットがあるべきなんだ。分かるかい?

F:次回はまず私に電話して聞いてみてください(笑)。今回のお話は素晴らしい内容で、たくさん学びました。
S:私はビリヤードをプレーするだけでなく、このゲームを守るために存在しているんだ。他の選手たちについては分からないけど、私は自分の仕事を知っている。あなたが私にそれをさせてくれるかどうかはわからないけど、私はそれでもトライするよ。世界中の人々は私たちを「プールシャーク」や「ハスラー」と呼び続けるのをやめなければならないよ。私たちの多くはプロです。私たちはこのゲームのために本当に一生懸命働いているんだ。私たちは本当に上手い。「ああ、ビリヤードに行かせるわけにはいかないよ。君は殺されるか、薬を買わされる」とビリヤードにそういうラベルを貼りたがる人はいるんだ。でもビリヤードルームは今、国内でもっとも安全な場所の1つ。昔よりもずっと安全なんだ。いつ実現するかわからないけど、モスコーニがフィラデルフィアの通りを歩いていた時のようになることを望んでいるよ。あの時代、誰もが彼を知っていた。彼はヒーローだったし、再びそうならなければいけないんだ。ビリヤードのトッププロが空港を歩いていくと、人々が彼らに気づく。街を歩いていくと、人々が彼らに気づく。そうなるべき、それが普通になるべきなんだ。
F:今日は本当にありがとうございました。

協力/Matchroom pool、翻訳・構成/森覺摩

第1回 ビリヤード愛がプレーの源
第2回 ギャンブルからトーナメントへ
第3回 少年時代のテニスと家出
第4回 世界選手権とモスコーニカップ
第5回 モスコーニカップの思い出
第6回 モスコーニカップの思い出
第7回 9フィートとジャンプとUSオープン
第8回 ギャンブラーは勝てない
第9回 シェーンとカチ、そして全てのプレイヤーへ

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