エイトボール世界選手権、日程・開催地が変更
Yalin WPA Men's World 8-Ball Championship@ニュージーランド・ハミルトン
5月14日(火)、『PREDATOR PRO BILLIARD SERIES』(PBS)のオフィシャルサイトで、今年の『 WPA Men’s World 8-Ball Championship』(男子エイトボール世界選手権)の日程・開催地が変更されたことが発表された。
PBSは、世界ナンバーワンのビリヤード企業である『PREDATOR GROUP』(プレデター)が主催・運営するプロビリヤードツアーで、ワールドプールシーンを統括する『世界プール協会』(WPA)から公認を受け、現在、男子エイトボールとテンボール、女子ナインボールとテンボールの世界選手権の他、昨年初開催されたチーム世界選手権の運営も行っている。
4月4日(木)に今年の『 WPA Men’s World 8-Ball Championship』(男子エイトボール世界選手権)と『VenBilliards WPA Women’s World 10-Ball Championship』(女子テンボール世界選手権)の2大会を、10月9日〜20日(水〜日)の日程でベネズエラ・カラカスを舞台に開催することを発表していたPBSとWPA。女子テンボール世界選手権の日程・開催地には変更はないが、男子エイトボール世界選手権の変更については、PBSのイベントマネージャー、ヴァンサン・ロシュフォール氏が以下のように説明している。
「レイズカップやハノイオープンのような重複するイベントがもたらす課題を理解しています。WPA男子エイトボール世界選手権をニュージーランドに移すことで、プレイヤーは全てのプレミアイベントに重複することなく参加することができるのです」
女子テンボール世界選手権は予定通りベネズエラ・カラカスで開催
レイズカップは招待制のアジアvsヨーロッパの対抗戦として10月17日〜20日の日程でフィリピン・マニラを舞台に初開催されるMatchroom Pool(マッチルーム)イベントで、『ハノイオープン』は、昨年の第1回開催時には、WPA傘下の『アジアビリヤードスポーツ連合』(ACBS)が、出場したプレイヤーに出場停止処分を下すなどの反発を見せた、マッチルームが運営するwnt.(ワールドナインボールツアー)のランキングイベントで、今年は10月8日〜13日に開催される。
レイズカップの開催は4月24日に発表された
つまり、この2大会にwnt.プロが出場する場合、エイトボール世界選手権には、ワールドトップスターのほとんどが出場せず、世界ナンバーワンを決める大会として成立しなくなる可能性が高く、これを回避するための止むを得ない変更ということになる。
WPAは、4月27日に新たな大会公認に関するガイドラインが更新されたこと、4月30日には、各大陸連盟メンバーが3月25日に集い新たな会則が全会一致で採択されたこと、5月4日には、マッチルームに対して、スケジュール重複を避けWPAに協力することを強く求める声明をオフィシャルfacebook上に投稿して、ワールドプールの統括組織としてのアピールを行ったが、状況が変わることはなかった。
ちなみに4月には、ロシア国籍で現在はアメリカを拠点に活躍するクリスティーナ・トカチに対するWPAの対応も杜撰なものとして話題となった。その内容は、2022年のワールドゲームズへの出場がロシアへの制裁により停止となった際に「次回は出場スポットを約束する」としていたWPAが、今年4月12日付けでその約束を反故にする内容の文書をトカチに送り、それをトカチがfacebookに投稿したことで明らかになり、欧米のプレイヤーやファンから「WPA is a Joke.」と批判にさらされる状況となったものだ。
クリスティーナ・トカチ(写真/森覺摩)
唯一WPAからの公認を受けて開催する6月の『WORLD POOL CHAMPIONSHIP』(男子ナインボール世界選手権)を含め、12月までにランキングイベントと招待制イベント22試合の開催を発表し、ワールドワイドな展開をさらに推し進めているwnt.。この状況への対応策が後手に回り、WPAに対しては、以前から囁かれることのあった統括能力を疑問視する声も目立つようになっている。
現在『チャイナオープン』、『カタールオープン』といった今後のWPA公認の主要ツアーとwnt.のメジャーイベントとの重複はなくなっており、ナインボールに関しては協調の様子が見える中、WPAオフィシャルサイトのカレンダー上には、今年新たにパートナーシップを結んだ「HeyBall」(ヘイボール/チャイニーズエイトボール)のイベントが数多く掲載されている。
また、5月16日の時点でオフィシャルサイトやロゴに変更はないが、facebookの組織名が、これまでの「World Pool Association」から「World Pool-Billiard Association」に変更になっていることからも、WPAが、すでに2025年に中国・成都で開催される『第12回ワールドゲームズ』の正式種目となっているヘイボールとの関係性を、オリンピック参加への足がかりとしても重視していく方向性であることが窺える。
WPAは先述の新たな会則採択に関する投稿で、「理事会は会長と12名の理事に拡大され、より広範な代表とガバナンスの強化への道が開かれました。この変更は単なる組織変更ではなく、世界のプール・コミュニティ全体の、より大きな革新と協力体制を築くためのものです。私たちは未来に胸を躍らせ、このスポーツの成長と発展に全力を尽くします」とコメントしている。
wnt.との軋轢が大きなきっかけとなったとはいえ、昨年から今年にかけWPAの動きが活発になったことは確かで、今後は統括組織として、この言葉通り「世界のプール・コミュニティ」をより良い方向に導いていくことができるのかが問われることになるだろう。