World Top Interview special アール・ストリックランド
第9回 シェーンとカチ、そして全てのプレイヤーへ
同時代を生き、数々の激闘を繰り広げてきたフィリピンのエフレン・レイズとならび、史上最高のナインボールプレイヤーの一人とされているアール・ストリックランド。
今回のWorld Top Interview specialは、今もなおトーナメントでプレーし続けるストリックランドが、『Matchroom Pool』(マッチルームプール)代表のエミリー・フレイザーを聞き手に、ビリヤードを始めたきっかけからプロとしてのあり方までを赤裸々に語った興味深いポッドキャスト番組を翻訳・再構成。ここではその第9回をお届けする。
●シェーンとカチ、そして全てのプレイヤーへ
F:シェーン(・バンボーニング)の話が何度か出ましたが、ビリヤードプレイヤーの中では彼を一番リスペクトされてるんですか?
S:彼の技術はリスペクトしているし、子供の頃は特に耳が聞こえないというハンデを抱え苦労しただろうし、プロプレイヤーとして素晴らしい成績を成し遂げて来たことは称賛に値するよ。彼は素晴らしい人だし、愛すべき男だ。一つだけ不満なのは、彼がまだギャンブルすることだな。何年かのうちに、こちら側に来てくれたら嬉しいんだけど、そうでなかったらがっかりするかもな。彼にもギャンブルはもう辞めろといつも言ってるんだけどね。本当の意味でのプロのビリヤードプレイヤーになって欲しいんだ。彼だけでなく全てのプレイヤーが私の目の黒いうちにこちら側に来て欲しいね。トーナメントツアーに出ている全てのプレイヤーがギャンブルと無縁になれば、キャデラック、フォード、保険会社、どんな企業でもスポンサーになってくれるよ。
F:数年前のワールドプールマスターズであなたと(エクレント・)カチの試合でのインタビューですごく目を引いたものがありましたが、あなたはいつも思ったことを口に出すタイプですか?
(※注1:試合後のインタビューでストリックランドがカチについて言った言葉「彼は良いプレイヤーだけど、素晴らしいプレイヤーでは(まだ)ないね」をさしていると思われる。
S:カチは素晴らしいタレントのプレイヤーだけど、まだまだこれからのプレイヤーだ。あの試合で私はあまりうまくプレーできなかった、彼のプレーは良かった。カチの才能は素晴らしい。メジャータイトルはまだだったような気がするけど、そのうち取るだろう。まだ23歳くらいだったと思うけど、時間をかけて上に登っていかなければならないね。
(※注2:カチは2021年にテンボール世界選手権でメジャータイトルを獲得)
F:シェーン以外のプレイヤーには少しきつい言葉も言ったりしていますが、それは皆にもっと努力して欲しいということでしょうか?
S:殆どの選手は練習熱心だよ。シェーンや私、ビリヤードの歴史に名を残したビリヤードプレイヤーは才能があったんだろうね。全てのビリヤードプレイヤーはある程度生まれ持ったものがあると思うけど、それでも皆努力しているし、一部の人はシェーンや私、バディ・ホール、マイク・シーゲル、特に、(エフレン・)レイズのレベルに行こうと思っても行けないよね。無理だよ。レイズの脳はアインシュタインと同じレベルじゃないかな。レイズはフィジカルに特に優れているって訳ではないからね。よく不思議に思うよ、何があの男をあんなに上手にプレーさせているのかって。レイズを含めて多くのプレイヤーが体を鍛えている訳でもないけど、ビリヤードは非常に上手い。おかしな話だと思わない?
F:今回プレミアプールリーグに参加して頂いて嬉しく思っています。難しいフォーマットだと思いますが、楽しめましたか?
S:プレーはあまり良くなかったね。体重も超過していたし、年を取ったからか、いくら頑張ってもどうにもならない時があるんだ。毎朝起きた時に何が起こってるかわからないしね。首が痛かったり、足が痛かったり、気分がすぐれなかったり。ビリヤードを上手くプレーするには気分が良くないとだめなんだよ。今日、さっきの試合は気分良かったんだけどね。どこも痛くなかったし。プレーも良かったと思う。気分が良くなるためにドラッグ使ってプレーする人もいるけどね。私も昔、少しの間は使ったことあったけど。
F:それはいつ頃の話?
S:アメリカではギャンブルする人が多くて、そういう人はドラッグを使うこともある。ドラッグで気分良くプレーできるからね。私も70年代に何度かやったことあるけど、ドラッグを飲んだ私のプレーは凄かったんだ。でもこんなことしてて30年後にどうなっているんだろうと考えたのと、ある日、賭け球で持ち金を全て失った時「ビリヤードが上手くなったのはこんなことをするためじゃなかった、俺は何をやってるんだ!」と思い、それ以来一切やらなくなったんだ。
協力/Matchroom pool、翻訳・構成/森覺摩
第1回 ビリヤード愛がプレーの源
第2回 ギャンブルからトーナメントへ
第3回 少年時代のテニスと家出
第4回 世界選手権とモスコーニカップ
第5回 モスコーニカップの思い出
第6回 100万ドルゲットとロードの思い出
第7回 9フィートとジャンプとUSオープン
第8回 ギャンブラーは勝てない