激闘を制した増田真紀子が初の女流球聖に
第15期女流球聖位戦 挑戦者決定戦@大阪・マグスミノエ
増田真紀子は連続防衛中の現女流球聖を倒して戴冠
4月7日(日)の朝10時、大阪のマグスミノエで、第15期女流球聖位決定戦が静かにスタートした。
第12期から続く4期目のタイトル防衛に臨むのは東京の梶原愛。昨年女流球聖と『全日本アマチュアナインボール選手権』(アマナイン)を制し、現女子アマ界の頂点に立つプレイヤーだ。昨年夏に第一子を出産したが2月の『全日本女子プロツアー』ではプロ5名を倒してベスト8に残るなど、子育てに奮闘しつつ昨年の強さを維持していることには本当に頭が下がる。
決戦前の2人
その梶原に挑むのは、昨日東日本代表の坂田夕紀を完封して挑戦権をゲットした大阪の増田真紀子。増田は2022年のアマナインの覇者でもあり、今年の決定戦は勢いのあるアマタイトル経験者同士の対決となった。
ちなみに両者は第12期の挑戦者決定戦で顔を合わせ、セットカウント3-1で梶原が勝利している。スコアは3-1だが、7-5が2回、7-6が2回という大接戦での決着だっただけに、前日の試合後に「やれることをやるだけです」と語ってくれた増田にとっては期するものがあったに違いない。そして再び、両者の対決は大激戦となる。
第1セット、増田は昨日も3セット撞いているだけに梶原よりもコンディションの掴みが早く、マスワリを2回出して7-3で先制。勢いだけ見れば増田の圧勝もあるかと思わせたが、昨年アマ二冠の梶原も負けてはいない。1セット撞いて身体も温まったのか、第2セットは7-4、第3セットは7-5と昼休憩前に逆転に成功だ。
しかし第4セットから梶原のパフォーマンスが一気に悪化する。ミスが増え、第4セット7-3、第5セット7-2と増田が獲り、セットカウント3-2でリーチをかける。練習で技術は磨けても、長時間のプレーを維持する体力は別物だ。そして時間と共に、疲れは梶原だけでなく増田にも圧力を強めていく。競る展開となった第6セット、第11セットで増田がマスワリ体制に入り、これで大勢は決したかと思われたが⑨が入らず逆に梶原がリーチ。そのまま7-5でセットカウントは3-3のタイに。
決定戦がフルセットに縺れ込むのは第11期の丸岡文子 vs 佐原弘子以来となるが、確率は結構高い。平口結貴のプロ入りによる空位を争った中村舞子 vs 野間多美子の第9期、佐原弘子が平口結貴の挑戦を退けた第6期などがそうだったが、フルセットが多くなるのも無理からぬこと。
他の試合の比ではないタイトル戦のプレッシャーが両プレイヤーの体力を容赦なく奪っていき、普段なら問題なく出来ている、試合の序盤までは上手くいっていた細かいヒネリりや力加減が何故か合わなくなっていくのだ。疲労によって頭で考えていることと身体の反応がズレてしまっても、4セット先取の長丁場ではそれを修正出来ないまま撞き続けるしかない。
最終セット第3ラックの時点で、試合開始から実に10時間が経過していた。ラストバトルは中盤5-3と梶原がリードを拡げたが増田も巻き返して5-5に追い付く。先にリーチをかけたのは梶原だったが、取り切るチャンスをものに出来ずフルセットのヒルヒルに。
最後にチャンスをものにしたのは増田
中盤の凌ぎ合いから梶原の⑤セーフティがオープンになり、増田が残り4球を取り切りに入る。そして、一球の結果に一喜一憂せずにポーカーフェイスを貫いてきた増田がゲームボールを落として歓喜の声をあげる瞬間がやって来た。関西からは14年ぶりとなる新女流球聖の誕生だ。
駆けつけた応援団にも支えられての勝利
これまでの女流球聖戦の歴史は圧倒的に東が優勢で、西日本代表の戴冠は九州代表だった中村舞子の第9期にまで遡る。試合後のインタビューで「超嬉しいです」と答え、長時間会場で支えてくれた家族や応援団への感謝の言葉を続けた増田。
「タイトルは防衛してこそ本物」という言葉もある。来年の初防衛戦への旅は始まったばかりだ。そして防衛にあと一歩のところで涙を飲んだ梶原の復位を目指す新たなる旅も。東西に分かれているだけに激闘を戦わせた両者の再戦はすぐにはないだろうが、早ければ6月末のアマナインで、2人がベスト4以上に勝ち上がることで実現するだろう。
次のJAPAタイトル戦は、4月20〜21日(土・日)の『第32期球聖位決定戦』。今度は妻の失冠を目に焼き付けた小宮鐘之介、現球聖位の出番だ。
防衛はならなかったが、梶原は、夫である小宮鐘之介(右端)と子供にも見守られながら素晴らしい戦いを見せた