World Top Interview special アール・ストリックランド
第3回 少年時代のテニスと家出
同時代を生き、数々の激闘を繰り広げてきたフィリピンのエフレン・レイズとならび、史上最高のナインボールプレイヤーの一人とされているアール・ストリックランド。
今回のWorld Top Interview specialは、今もなおトーナメントでプレーし続けるストリックランドが、『Matchroom Pool』(マッチルームプール)代表のエミリー・フレイザーを聞き手に、ビリヤードを始めたきっかけからプロとしてのあり方までを赤裸々に語った興味深いポッドキャスト番組を翻訳・再構成。ここではその第3回をお届けする。
●少年時代のテニスと家出
F:ウェブサイトで古い写真を見つけたのですが、随分長髪で、毛先の方はカールして、女の子のような髪型をしていたのですね。
S:昔は長髪にするのが好きだったよ。テニスプレイヤーの中には、あなたも知っているかもしれないけど、ロシアのアンドレイ・ルブレフやセバスチャン・コルダがいるだろ。彼らは本当に長い髪で、女の子のように髪を留めてるけど私もそうで、髪を切りたくなかったし、長いのが好きだったんだ。実際には馬鹿みたいに見えるけど、私はいつも髪の毛が目に入らないようにピンで後ろに留めていたりしてたよ。
F:テニスをよくプレーしてるんですか?
S:毎日プレーしているよ。1975年以来ほぼ毎日ね。ガールフレンドと一緒にプレーしてるけど大好きだから飽きることがないよ。先日、ドロップショットを打とうとして、思いっきり転んで足に痛みがあるけど、それでもプレーしているよ。彼女はテニス肘になったけど、今ではだいぶ良くなってる。だから家に帰ったら、またテニスをするね。私は毎日でもプレーしたくて、テニスについて知っていることを彼女に教えてる。時々、彼女が怪我をして続けられなくなることがあるけど、どれだけ上手くなったかは驚くべきことだよ。テニスは私にとってビリヤード以外で最も素晴らしいゲーム。本当に素晴らしい。それは実際にビリヤードのようなものだよ。もっともプレーするのにはもっと体力が必要だけどね。もし、テニスコートで私を見たら驚くと思うよ。信じられないだろうけど、猫のように動くからね(笑)。
F:あなたは62歳と言っていましたが、先日、ジムでトレッドミルを使っているのを見ました。これは長年にわたって体調管理に役立っていますか?
S:私の足があとどれくらいもつか分からないけど今は元気だよ。最近数か月間、足に何か問題があって、しゃがもうとすると、ふくらはぎが痛んでいたけど、今は良くなってきてる。もしかしたら、この前テニスコートで大けがをした時に何かあったのかもしれませんね。
F:若い頃、夜ビリヤードをプレーしていた時にも昼間に起きてテニスをしたり、他のスポーツをしたりしていましたか?
S:1975年以降、14歳の時に昼間の生活に戻ってその頃からテニスを初めたんだ。そしてその頃、私は家を飛び出したんだ。ビリヤードをしに行きたい、国を見て回りたい、と思ったんだ。両親は私をアメリカ中追いかけ回して、見つけようとしてた。でも私はビリヤード場に行けば簡単にお金を稼げたので、町から町へと旅して回ってたんだ。
F:捕まる前にどれくらい逃げ切りましたか?
S:結局両親は私を捕まえられなかった。約1年経って、自分から家に戻ったよ。おそらく母をすごく心配させただろうけど、それは私が望んだことだった。もちろん今の子供達は私のような真似はできないし、私がしたことは不可能だし、絶対に真似してはいけないよ。アール・ストリックランドは1人しかいないし、私のように技術を学んだのは私しかいないんだ。そして私は生まれながらのプレイヤーだった。だからこそ、それを追求したかった。学校では集中できなかったし、ビリヤードは私を完全に虜にしていたからね。今の子供たちに、家を飛び出してビリヤードをプレーするべきだと思わせたくはないね。だって、それはうまくいかないだろうし、決して私のようにはなれない、不可能なことなんだよ。
協力/Matchroom pool、翻訳・構成/森覺摩