「ローテションは大好きな種目」飯間智也が初優勝!
第73回全日本オープンローテション選手権大会@大阪・マグスミノエ
飯間はファイナル3度目の挑戦で見事戴冠
3月16日、17日の両日、大阪の『マグ・スミノエ』(予選は『タツミ』併用)において『第73回全日本オープンローテーション選手権(西G3)』および『第63回全日本ローテーション選手権B級』(17日のみ)が開催され、ローテーション種目(オープンは360点先取、B級は120点先取)で競い合った。
決勝会場となった『マグスミノエ』
結論から先に入ると、ジャパンオープン2連覇中の飯間智也が、決勝戦で杉原匡を下してローテーション種目で初めての優勝を飾った。またB級の部では藤本寛子(ツェット九条)が、渡辺宣寿(ジュニア)を破って栄冠を掴んだ。
B級の部を制した藤本寛子
馴染みの薄い方に向けて補足をしておくと、ローテーションは日本独自の種目と言われ、的球の番号がそのまま得点となる独自性のあるゲーム。日本ではポケット=ローテーションであった時代に始まり、そのストーリー性の妙味やショートゲームでも高い満足度が得られる点などから、
今なお根強い人気を誇る種目だ。『日本アマチュアポケットビリヤード連盟』(JAPA)が主催する都道府県対抗でも膨大な試合数を消化し、かつ参加者に満足度を与える貴重な種目として創設時から現在まで支持され採用を続けている。
3位タイ・正崎洋行
今年は360点先取のシングルイリミネーションで開催されたオープン級は、初日に8人まで絞り込んだ。その狭き門を潜り抜けた8名を枠順にベスト8の対戦順で紹介すると、飯間と大阪の國方浩二、福岡の正崎洋行と奈良の新人プロ・山下直生、杉原匡と川端聡の大阪対決、本大会昨年の優勝者である竹中寛vs北谷好宏という今まさに西日本ランキング首位を争う2人の対戦に。
ここでは飯間、正崎、杉原、竹中がそれぞれ勝利を収めて準決勝に進出を果たした。ここでも得点差が開いてもなお両者に勝機があるゲーム性でギャラリーを楽しませていた。
3位タイ・竹中寛
準決勝ではまず1ラック目を120-0とした飯間が、このアドバンテージを生かし切る形で3ラック目を終えて240-120とする。すると第4ラックも飯間が技アリのマスワリで決めて2018年以来2度目となる本大会決勝進出を決めた。隣のテーブルでは杉原と竹中がデッドヒートを繰り広げて勝負は最終ラック(第6ラック)までもつれ込む。そして取り切り体勢に入った竹中に「まさか」のミスが出た格好となりゲームボールは杉原のものとなった。
準優勝・杉原匡
決勝戦は飯間が先行し、3ラック目を終えた折り返し次点で275-85とリードを保つ。しかし第4ラックは杉原が流れを引き戻した格好となり319-161に。そして次ラックを杉原がマスワリか? という残り3球の場面で無念のスクラッチ。ここで飯間がセンターショットから3球を取り切り、自身初となる本大会優勝を飾った。
リードを守り切って初制覇
なおベスト8の顔ぶれを見ると「誰が優勝してもおかしくない」B級の部は、準決勝で京都の土肥康人を下した兵庫の渡辺宣寿と、同じく愛知の鳥田めぐみを破った大阪の藤本寛子の決勝戦に。こちらも残り2球までもつれる勝負の末、難球となったゲームボールを一撃で仕留めた藤本に大きな拍手が贈られた。
B級の部ベスト4。左から3位タイ・土肥康人、優勝・藤本寛子、準優勝・渡辺宣寿、3位タイ・鳥田めぐみ
表彰式後にコメントを求めると「ローテーションは大好きな種目。常に取り切りを描いて組み立てて、難球を攻める時はアンドセーフが描ける形で」と、種目への愛と戦術を口にした飯間。
確かに前回(2023年)は3位、その前(2019年)は準優勝、さらにその前(2018年)も準優勝と、戦績でも存分に強さを残している。しかも2018年と同じファイナルカードで、今回はそのリベンジを果たした形となっていた。ボールが多く難しいだけに攻略には知恵とテクニックが求められる。それを自ら示す優勝劇に乾杯。
またB級の部で優勝した藤本は「まさか優勝出来るとは思っていませんでした」と謙虚な言葉が口をついて出ていた。だが「まだシナリオを作って組み立てる力は自分にはないのでガッツで戦いました」と、ゲーム性と自身を冷静に分析する様に、B級卒業の布石は十分に整っているのだと窺えた。来年はどのようなストーリーが展開されるのか。ローテーションが持つドラマ性を多くの人に楽しんでいただきたい。
Akira TAKATA