男子テンボール世界選手権@アメリカ・ラスベガス

全てにおいて完璧に近いプレーを見せたビアドが自身2つ目の世界選手権タイトルを獲得

大会最終日を迎えた『世界プール協会』（WPA）公認の『PREDATOR WPA WORLD 10-BALL MEN’S CHAMPIONSHIP』（男子テンボール世界選手権）。日本から出場している大井直幸（FR：817）はこの日、初の世界タイトル制覇を目指し出陣し、まずは3日3時からの準決勝でデニス・グレイブ（エストニア/FR：796）と対決した。
（FRはファーゴレート）

3セット先取（1セット4ラック先取。セットカウント2-2の最終セットのスコアが3-3になった時点でシュートアウト）となるフォーマットの中、この試合に3-2（4-2、3-4、3-4、4-2、4-0）で勝って、自身2度目の決勝に進出。フェダー・ゴースト（AIN/FR：844）に3-1で勝利したカルロ・ビアド（フィリピン/FR：829）と世界王者の座を争うこととなった。
（※AINは、国や地域を代表しない「中立な立場の個人資格の選手」を指す）

準決勝に勝ち、自身2度目の決勝進出

3日8時、大井のブレイクスクラッチからスタートした決勝戦、ビアドがそこからの取り切り、次ラックはマスワリで2-0。第3ラックはビアドのノーインから取り切った大井だったが、第4ラックは③での攻防を制したビアドが取り、第5ラックはマスワリと完璧なプレーを見せ、第1セットは4-1でビアド。

第2セットは、第1ラックの大井の⑩ミス、第2ラックではハイレベルなセーフティ戦を制してビアドの2-0。その後1ラック取り返した大井だったが、第4ラックでこの日2度目のブレイクスクラッチ。ここを逃さなかったビアドが3-1とリーチをかける。

ここまで自身のミスとビアドの精度の高いプレーもあって嫌な流れとなった大井だったが、ここから反撃を開始。第4ラック、ビアドのノーインから取り切って2-3とすると、第6ラックは②⑨のトラブルがあることで①を巡る長いセーフティ戦となる。ここを耐え切り、ビアドに初めてほころびが出たところを捉えて3-3とすると、最終第7ラックをこの試合初のマスワリで締めてセットカウントを1-1に戻す。

大井は苦しい第2セットを制して同点に追いつく

勝負を分ける第3セット、ビアドにプレッシャーをかけていきたい大井は、観客からの声援も味方につけて、第3ラックまで2-1とリード。第4ラックでもビアドから2ファウルを奪って主導権を握ったが、積極的にいったトラブル解消のショットがブラインドとなってしまい、そこからのジャンプショットでファウルを犯してしまう。

観客の声援に応える大井

ここを見逃さないビアドが取り切って2-2。さらに次ラックのマスワリでリーチをかけたビアドは自身のミスから大井にチャンスを残してしまうが、取り切って追いつきたい大井が⑦で痛いシュートミス。残りを捌いたビアドがセットカウント2-1とした。

攻防ともに精度の高いショットとメンタルタフネス。ビアドはこの試合でワールドトップの強さを改めて見せた

追いつきたい大井の第5セット、ビアドは第1ラックで①⑧キャノンからの取り切りで先制。第2ラックはローボールでの攻防の末、大井が③のジャンプショットを決めたが、これがブラインドとなり、キックショットで狙った④が外れてビアドにターンを譲ると、ビアドがそのまま取り切って0-2。続く第3ラック、ビアドのブレイクはこのセット3度目のノーイン。オープンな配置で反撃のチャンスを得た大井だったが、ここで痛恨の①ミススクラッチ。

敗れはしたものの、大井はこの試合で世界最高峰のテンボールバトルを繰り広げた

0-3とリーチをかけられて迎えた第4ラックで、ビアドのサイドスクラッチから取り切って最後のチャンスを得た大井だったが、第5ラックのブレイクは2個インながら①の攻めが厳しい形となってセーフティ。しかし、これが決まらず、球越しとなった①を冷静に沈めたビアドがそのまま取り切ってセットカウント3-1で、2017年のナインボール世界選手権に続く自身2つ目の世界選手権タイトルと、優勝賞金75,000ドルを獲得した。

11日間に渡りWPAランキングイベント3つと招待イベント2つの計5大会が行われてきたラスベガスシリーズはこれで終了。クライマックスの男子テンボール世界選手権決勝は、互いのショット、駆け引き、メンタルの戦いの全てが、これぞ最高峰のプールバトルとなり、大井の世界獲りが達成されなかったのは残念だったが、11日間のシリーズは最高のフィナーレを迎えることとなった。

写真／森覺摩
PRDATOR PRO BILLARD SERIES