西荻窪で村松さくらの開花宣言
全日本女子プロツアー第1戦@東京・たまや
村松さくらが公式戦初勝利
暖冬を象徴するような暖かさとなった2月17日、18の両日、西荻窪の『たまや』(予選は『WISH』併用)において、『全日本女子プロツアー第1戦』が開催された。
同店でのツアー開催は初。オーナーの野内麻聖美氏(元JPBA)の競技ビリヤードへの想いが結実した形で、自身がプロ時代に毒舌司会で盛り上げていた女子プロと観客による『ペアマッチ』や、豪華景品を賭けた勝者当て予想、そして準決勝では高木まき子プロを、決勝戦では梶谷景美プロを解説に迎え、自らが実況を務めて音声入り配信も行われた。
オーナーの野内氏が久々にマイクを握りペアマッチを盛り上げた
コロナ明けから国内女子プロ界は勢い増す一途。これは光岡純子JPBA女子ブロック長が昨年に本誌のインタビューで語ったように、「キャラクターが豊富でベテランからルーキーまで幅広いメンバー」と、多彩な役者がそろい踏みしている点が大きいと感じる。
実際、河原千尋、栗林美幸、平口結貴が3人でファイナリストを回しているかと思えば、昨秋のジャパンオープンは青木知枝と梶谷が決勝戦を戦い、北陸オープンでは曽根恭子と村松さくらが、年初の関西オープンでは栗林と夕川景子がファイナル共演を果たしている。主力格と目される層やグングン伸びる若手、返り咲きを目指して自身の球を見直すベテラン勢まで、まさに群雄割拠で女子プロ史上最高の『戦国時代』が訪れている。
3位タイ・久保田知子
そして今回、新たに主役に名乗りを上げたのが前出の村松。予選で高木まき子、夕川という先輩たちを連破すると、決勝日にはマスワリ量産態勢でルーキーの若江梨々花を皮切りに河原、そして久保田知子を全て3点以下に抑えて、自身2度目となる国内公式戦決勝進出を果たした。
3位タイ・奥田玲生
反対の山からは再び上昇傾向が著しいベテランの山内公子が勝ち上がる。予選日は初戦で新人の谷みいなに敗れて敗者側に回るも、そこから3連勝で決勝日に進むと、予選最終の土師理恵子戦から実に4連続のヒルヒル勝利でファイナルへ。しかも決勝日は栗林、曽根、そして奥田玲生と、いう面々を土俵際で退けて勝負強さを存分に示している。また決勝日に梶原愛(5位タイ)、島崎史恵(9位タイ)の2名のアマチュアが残ったことも、近年のツアーではレアケースなので記しておかねばならない。
注目の決勝戦は4-4まで競り合うが、ここから抜け出した村松が嬉しい初優勝を飾った。惜しくも18年ぶりのタイトルまであと一歩に終わった山内は、近年あらためてレッスンを受けるなど意欲を持って取り組んでおり、競った場面での強さも存分に披露。おそらく今回も新たな課題と意欲を持ち帰ったに違いない。
準優勝・山内公子
一方、ジュニア時代から大器と目された村松だが、海外経験も含め着実に階段を上ってきた。この日も怠らない配置確認や、ショット後に長く上体を残すなど、自身のルーティンを守り抜いていた様子。表彰式後に村松は、
「去年は(北陸の決勝で)悔しい負け方で優勝を逃して、勝つための練習を重ねてきたので本当に嬉しい。何より応援をしてくれる人に一番良い報告を出来ることが。今年は年初に『国内戦3勝』を自分の目標に決めていて、この2戦目で獲れたこともよかった。海外戦ももちろん一生懸命やりますが、国内も強い選手がたくさんおられることは分かっていて、リスペクトも持っている。優勝出来たことでビリヤードを楽しいと思えること、自信にもつながり、もっとビリヤードを探求したいという思いも芽生えている」(要約)
と、まっすぐな瞳で努力、目標、覚悟を備えたアスリート像を強く感じさせるコメント。
今年は国内戦3勝の大きな目標を持って戦う
村松の初優勝が他のプロに与える刺激も大きいだろう。今シーズンの主役候補を数えると両手でも足りないJPBA女子ブロック。閉会式の挨拶で野内氏も「こんな世界で自分が戦っていたなんで信じられない」と、笑いを交えて女子プロのレベルの高さに触れていた。
層の厚さとレベルアップで既にオーバーヒートぎみとなっている今年。その中で早々に結果を出した村松だが、アスリートとして見据える様を見ると、『満開』ではなく『三分咲き』と捉えるのがよさそうだ。女子の次戦は3月に愛知(『名城』ほか)で開催される第2戦。かつてないほどに「目が離せない」戦線をどうぞお見逃しなく!
Akira TAKATA