【第52回全日本選手権SP_Vol.13】女子の海外勢注目選手
前回は男子の海外勢注目選手をご紹介したが、今回は女子の海外勢注目選手をご紹介していきたい。女子はアジア圏からの参戦が主で、特にJPBA勢にとって脅威となるのは人口14億人を擁するお隣の中国だ。現在のWPAランキングトップ10の内、半分の5名が中国勢で、その中からは4名が『全日本』に出場してくる。今回はその4名と、台湾1名の計5名をピックアップしたい。彼女達を見るだけでも観戦の価値は十分にあるだろう。
付小芳(中国)
最初に紹介するのはWPAランキング6位の付小芳。’10年に『女子ナインボール世界選手権』で優勝を果たし、世界女王の仲間入りを果たすと、翌年には『チャイナオープン』優勝、’12年には『女子ナインボール世界選手権』準優勝、『女子テンボール世界選手権』3位タイと中国を代表する選手の1人となった。昨年は2度目の『チャイナオープン』優勝と、『ナインボール世界選手権』で4位という結果を残している。付は未だ『全日本』のタイトルは獲得しておらず、’07年の3位タイが最高成績だ。’07年はベスト16で韓国のパク・ユンジを9-3で破ると、ベスト8で’06年大会の覇者であり、同年に『アジア競技大会』エイトボールで金メダルを獲得した台湾の林元君に9-4で勝利し3位タイとなった。今年はWPAランキング対象戦となったこともあり、初の『全日本』戴冠に向け高いモチベーションで挑んでくるだろう。
劉莎莎(中国)
2人目はWPAランキング4位、劉莎莎(中国)。最強中国を支えている1人で、’09年、『女子ナインボール世界選手権』にて、最年少記録となる16歳で世界女王となった。その後も’13年の『チャイナオープン』を優勝、’14年、’15年には『世界選手権』2連覇と、3度の世界一に輝いており、日本人選手にとって脅威でしかない存在だ。『全日本』はこれまで’09年の3位タイ、’14年の準優勝と意外にも優勝はしていない。’14年の決勝戦の相手は同年の『ジャパンオープン』を制し、台湾の新エースとして注目を浴びていた呉??。この試合は呉が勢いに乗り、同年の世界女王である劉でさえ手が付けられず3-9で敗れた。今年は付小芳同様、初優勝を飾るべく気合いを入れて臨んでくるはずだ。
陳思明(中国)
3人目はWPAランキング2位、陳思明(中国)だ。同選手はJPBAランキングトップ5での平口結貴、栗林美幸の記事でも登場しており、多くの日本人選手の『全日本』制覇を阻んできた選手だ。陳のこれまでの成績を挙げると、’14年、’17年の『女子ナインボール世界選手権』、’16年の『チャイニーズエイトボール世界選手権』、’17年の『ワールドゲームズ』、同年、’18年の『アムウェイ世界ナインボールオープン』を優勝。この他にも『チャイナオープン』通算3度の制覇と枚挙に暇が無く、実力・実績共に”世界最強”の呼び声が高い。『全日本』はこれまで’11年、’17年と2度制している。’11年は当時17歳にしてWPAランキング1位の座に就いており、決勝の舞台では10代とは思えない落ち着き振りで光岡純子にマスワリ5発など圧倒。結果、9-4で初の全日本タイトルを獲得した。
’17年はさらにパワーアップしており、その年の陳は『アムウェイオープン』、『チャイナオープン』、『ワールドゲームズ』、『グリ国際ナインボール』『世界選手権』と5つの国際大会の内、『グリ国際ナインボール』を除く4つの大会で優勝。通算成績は28勝1敗。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いで『全日本』へと乗り込んできた陳は、決勝で栗林を9-1とチャンスすら与えず撃破し通算2度目の優勝を飾った。女子の試合を観戦される時はまず陳思明を探してみてほしい。
韓雨(中国)
4人目は現WPAランキング1位の韓雨。11歳でビリヤードを始め、14歳(’06年)の時に『全日本』初出場で17位タイという成績を残した。そして翌年(’07年)からは3位タイ、翌々年(’08年)に5位タイと着実に上位に名を連ねるようになり、自身4度目の出場となった’09年。当時17歳にして韓雨は決勝の舞台に立ち、韓国のリム・ユンミに逆転勝利して初優勝を飾った。これは女子の最年少優勝記録として今なお破られていない。この優勝について韓雨は「海外の試合で決勝戦に進んだのは初めてでしたが、国内では何度も経験していましたから、特別緊張するということはなかったです。(中略)試合の時いつも考えるのは『普段通りに』ということだけです。」と本誌’10年2月号のインタビューで語ってくれた。その後は’13年、’16年、’18年に『女子ナインボール世界選手権』、’14年、’16年に『チャイナオープン』を優勝と、瞬く間にワールドトップの仲間入りを果たし、現在では陳思明とランキング1位をかけて熾烈な争いを繰り広げている。果たして今年はどんな戦いを『全日本』で見せてくれるのだろうか。
周??(台湾)
最後、5人目は台湾から。WPAランキング8位タイ、今年の『ジャパンオープン』にも出場し5位タイの成績を残した”大眼妹”こと周??。台湾が世界に誇る選手の1人で、’09年に『アムウェイ女子世界ナインボールオープン』で初の国際タイトルを獲得して知名度を上げた。同年には『アジア選手権』で準優勝も果たしている。その後、”10年には『アジア競技大会』ナインボールで銀メダル、エイトボールで銅メダルを獲得。さらに’12年、’14年に『アムウェイオープン』で’09年と合わせて3度目の優勝、’13年に『ワールドゲームズ』金メダルを獲得している。また、以前は日本のオープン戦にも度々出場しており、’10年に『関西ナインボールオープン』準優勝、『ジャパンオープン』優勝。翌年には『北陸オープン』にも出場し、優勝を飾っている。
これまでの『全日本』の最高成績は’12年の優勝となっている。’12年は中国・韓国勢が不在(政治的な影響により)だったとはいえ、台湾のトップクラスは揃って参戦し、過酷なタイトル争いが行われた。決勝は陳禾耘(台湾)との同国対決となり、結果はなんと9-0で周の完勝。男女共に台湾勢がワンツーフィニッシュという大きなインパクトを残して大会は幕を閉じた。
陳佳樺(台湾)
今回は残念ながら『全日本』3勝の成績を挙げている”アイスエンジェル”潘暁?(中国)の参戦は無いが、彼女達以外にも今年の『ジャパンオープン』制覇を成し遂げた台湾の陳佳樺や昨年の同大会を制した同じく台湾の郭思廷など、見所が非常に多い。JPBA勢とワールドクラス達の共演をぜひ会場に足を運んで頂き、その目で見届けてはいかがだろうか。
写真提供:On the hill!