ワールドプールマスターズ2019@ジブラルタル
3月29〜31日(金〜日)の3日間、イベリア半島にあるイギリス領・ジブラルタルの『ヴィクトリア・スタジアム』にて、『WORLD POOL MASTERS 2019』が行われた。日本からは
大井直幸が出場したが、初戦の相手、ロシアのフェダー・ゴーストに7−2で敗れ、17位タイという成績で大会を終了した。各国のスター選手達が集まる大会を制したのは、一昨年の覇者であるスペインのデイビッド・アルケイドだった。
会場のジブラルタル『ヴィクトリア・スタジアム』
アルケイドの初戦は、同郷のフランシスコ・サンチェス・ルイス。この試合を7−3で勝利すると、2回戦目となるベスト16では昨年の覇者、オランダの
ニールス・フェイエンとの対戦に。一昨年と昨年のチャンピオン同士という注目のカードの結果は、4−3からアルケイドがフェイエンのミスを逃さず3ラック連取し、7−3で勝利を収めた。アルケイドはその後も、準々決勝でアメリカの
シェーン・バン・ボーニングを7−3、準決勝でアルバニアのエクレント・カチを8−3と、危なげなく決勝まで駒を進めた。
昨年の覇者、ニールス・フェイエン(左)と一昨年の覇者、デイビッド・アルケイド(右)
もう一方の山を勝ち上がり、決勝に進出したのはギリシャのアレキサンダー・カザキスだった。カザキスは初戦にオーストラリアのジャスティン・サジッチを7−3、ベスト16でニュージーランドのマシュー・エドワードを7−1、準決勝でアメリカのスカイラー・ウッドワードを8−1と、準決勝を終えて失ラック5という成績は圧倒的だった。
カザキスはあと1球というところで優勝を逃してしまい悔しい結果に(写真は2018WPAナインボール世界選手権より)
決勝の組み合わせは大会2勝目を狙うアルケイドvs大会初優勝を目指すカザキスとなった。試合序盤はカザキスが準決勝までの勢いそのまま、5−0と突き放す。アルケイドも何とか食らい付いていこうとするも、カザキスが8−5と優勝に王手をかけた。
試合はこのまま終了するかと思われたが、アルケイドが執念の粘りを見せ、3ラック連取するとスコアは8−8のヒルヒルとなった。
(写真は2017年の同大会より)
決勝に相応しく、極限の緊張感の中で迎えた最終ラック。アルケイドのブレイクは2・4番がイン。1・3番を取ったが、5番へのポジションミスにより8番で隠れてしまう。これをカーブで狙いにいったが穴前に残ってしまい、一気にアルケイドはピンチに陥る。しかし、何が起こるかわからないのがビリヤード。カザキスが珍しく、8番から9番へのポジションをミスし、長クッションに向かって一直線になってしまう。これには仕方なく短ー短のクッションに分けるセーフティを選択、残り1球の駆け引きは長期戦になるかと思われた。しかし、アルケイドはこのチャンスを逃すまいと縦バンクを狙い、見事にポケットに沈めて逆転優勝を決めた。
1歩間違えば相手の優勝になり得るリスクの高い状況の中で、縦バンクを選択できるアルケイドは圧巻の一言だった。試合後、同選手は熱狂的な応援団と喜びを分かち合うとともに、カザキスのもとに行き健闘を讃えることも忘れなかった。昨年の12月で40歳になり、節目の年で再びこのビッグタイトルを掲げることができたことに、喜びも大きかったことだろう。今後も世界の舞台で大いにギャラリーを沸かせてもらいたい。
写真提供:マッチルームスポーツ