2018西日本グランプリ第3戦
川端は嬉しい今期初優勝
川端聡、48歳。満開の笑顔が京都で咲いた。
5月13日(日)に京都の『サンク』(予選は『VAMP』、『Y's』併用)で開催された『西日本グランプリ(西GP)』第3戦。第1戦で準優勝だった川端が、ファイナルで飯間智也を下して約4年ぶりとなる西GP優勝を飾った。
前週の記事にも記したが、2004年に始まった西GPにおいて、二桁勝利を記録しているのは、大井直幸(16勝)、田中雅明(13勝)、そして川端の3人のみ。4位以降は赤狩山幸男の7勝、そして5勝で並ぶ北谷好宏、竹中寛へと続く。参考までに川端は、西GPの前身である『西日本プロツアー』でも4度の優勝をマークしている。
会場となった『サンク』
さて、大雨となったこの日の京都。テーブルコンディションは難しく、各テーブルで対応に苦しむ選手の姿が見受けられた。決勝(ベスト16)のメンバーが午後3時には出揃い、内半分にあたる8名がGP初優勝を狙うという、フレッシュなメンバーが集結した。なおルーキー田中汰樹、そしてアマチュアの杉山功起という、2名のティーンエイジャーがここに残った点も特筆すべきだろう。今回は杉山は田中雅明に敗れて9位タイ、田中は
和田敏幸をフルゲームで破るも、続く
岩瀬賢吾戦で敗れて5位タイ終わったが、未来のエース世代に期待が寄せられる状況。
3位タイ・岩瀬賢吾
準決勝は川端vs岩瀬、竹中vs飯間のカードに。この日、冷静かつ確実にゲームを運んできた岩瀬がここでも先行し、4-4に並ばれるも、川端のブレイクノーインから取り切り、さらに川端のミスを得点につなげ6-4でリーチ。ゲームは決まったかに見えたが、集中力を切らさなかった川端がここから捲り勝ちを収めた。一方、飯間は序盤で得たリードを守り切って竹中を7-4のスコアで振り切った。
3位タイ・竹中寛
こうしてファイナルは川端と飯間のカードに。この2人の決勝戦は2010年の西GP第4戦以来、8年ぶり2度目。昨年にプロ復帰を果たした飯間の活躍はご存知の通り。その飯間と練習でキューを交える機会も少なくないという川端にとって、今一番欲しいものはタイトルだろう。2014年の西GP第4戦で優勝して以来、実に6度の準優勝を味わっての今回。ハイアベレージは変わらずとも、頂上の景色を知るだけに、想いは一際のものに違いない。
準優勝・飯間智也
飯間のブレイクスクラッチから川端が取り切って先行。ここから一気に川端が走るかに見えたゲームだったが、第4ラック、第5ラックと続けて10番を飯間に献上するなど、波に乗り切れず、飯間が5-3とリードしてゲームは終盤へ。ここで飯間が取り出しの1番でトリプルコンビを狙うも僅かに逸らすと、これを川端がサイドバンクから取り切って一つ返す。そして技アリの2連続マスワリで逆転リーチ。シャツの上からでも見て取れる均整の取れた川端のマッスルバランス。ブレイクの強さと上手さも一級品だ。そして第12ラック。2番でチャンスを得た飯間が取り切ってヒルヒルに。と、思われたところで、8番を入れてスクラッチ。「まさか」のラストで、西日本現2強レフティ対決は幕を下ろした。
完成度の高いブレイクが勝因の一つとなった
ここ数年、左手が自分のイメージ通りに振れず悩んだ川端。だがフィジカル面でも精神面でも強さを増した。終了後に満面の笑みを浮かべ「だましながら、誤魔化しながら、何とか勝つことができました。この1勝が(復活の)良いきっかけになるとよいのですが」と、優勝から離れた期間の苦しさ、現状の最善を尽くして得た結果の喜び、そして未来への希望を短くまとめた。そして「自分が一番強く戦えていた頃、例えばランキングで1位を獲った頃よりも、今の方が試合をするのが楽しいんです。『いつ克服できるんだろう?』って」。
2006年アジア大会金メダリスト。2004年、2007年、2008年日本ランキング1位。全盛期の楊清順(台湾)や吳珈慶(中国)らと渡り合った日本が誇る左腕のエース・川端聡。近年のアベレージの高さは、その経験値は底上げ材料にあれど、精神的、肉体的な更なる成長があってのもの。戦績を残す根拠は十二分にある。ファイナルで敗れた飯間もまた、この日十二分に経験値を高めただろう。その一方で未勝利組や2勝目を狙うグループが、漠然と"順番"を待っているように感じる今日この頃。京都の名手、故桧山春義プロの顔が思い出される。
Akira TAKATA