【特別企画】アダムジャパンの今! 第3回
キューメイキングの現場から〜仕上げ編〜
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2000年に誕生し現在も国内外の数多くのプレイヤーに愛され続けているアダムジャパンのフラッグシップキュー『MUSASHI』。本社工場では、その製作から発送までの全ての工程が、スペシャリスト達の手によって行われている。
第3回目となる【特別企画】アダムジャパンの今。今回はバットを仕上げていく工程から、MUSASHIが最終的に完成形となっていくまでをお届けする
●新たなチャレンジはハギとインレイの融合
アダムジャパンは今、スペシャリスト達が一丸となって新たなMUSASHIを生み出している。それが「矢倉」と「雁木」と名付けられたニューモデル。今回は特別に現在製作中の雁木にインレイを施す工程を見せていただいた。
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使用されているのはコンピュータ制御のCNC旋盤で、ほぼ完成形のバットのフォアアーム部分にインレイ材に合わせた形の穴を削り出していく。スペシャリストの手によって正確にセッティングされたフォアアームに時間をかけて彫られた挿入部に、同じくCNCで削り出されたシルバーのインレイパーツを丁寧埋め込んでいく。
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●パーツを繋いだバットを寝かせ、整える
フォアアーム部とグリップ部をつなぎ合わせてバットが形作られると、そこからすぐに加工に入らず、一定の乾燥期間を経た後、まずはサイズに合わせて全体を削り、その後に僅かな曲がりや狂いなどがあればチェックして整える。
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生きている木は、乾燥の間にもわずかに動くことがあるということで、この工程でのチェックと調整は重要な、熟練のスペシャリストの目と感覚でしか判断がつかないほど繊細なものだ。そしてこの後にスリーブを入れるため、バットエンドの荒削りを行う。
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●スリーブ部分の最終的なサイズ出し
次の工程では、バットエンド側がある程度削られたバットに別に製作されているスリーブ部分を組み込むために、旋盤を使ってさらに正確なサイズに削り出していく。
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緩すぎ、キツすぎのどちらも許されないジャストサイズが求められるこの作業。もちろん目安となるサイズは決まっているが、一本一本が微妙に異なる木を相手に、最終的な仕上がりサイズに合わせていくのにはやはりスペシャリストの丁寧な仕事が不可欠となる。
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●ジョイントを正確に埋め込んで完成形に近づく
スリーブ部分がはめ込まれデザイン的にほぼ仕上がってきたバットに、いよいよオスネジとなるジョイントピンが埋め込まれる。そしてこの工程では、シャフトにメスネジとなるパイプを埋め込むのと同じマシンが活躍する。
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マシンのセッティング通りに2段階で穴を開け、さらにネジを切ってそこにジョイントピンを埋め込んでいく工程はシャフトの作業と同じ。ここで僅かでも中心がズレたり、ピンが傾いてしまうと製品にならないため、作業そのものももちろん、最終チェックにも細心の注意が払われる。
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●組み上がったキューの塗装前チェック
ジョイントピンが埋め込まれたバットに、ジョイントカラーが取り付けられると、ここでシャフトとつなぎ合わされ、MUSASHIは完成に近づいていく。そして、つなぎ合わされて1本となったキューは、塗装に入る前の下準備の工程に入る。
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ここでは、完璧な塗装を行うためにキュー全体の汚れをチェックするのと同時に、塗装剤の乗りをよくし、美しい仕上がりとなるよう、スペシャリストの手によって丁寧に磨きがかけられる。
この後仕上がりがチェックされた後、キューはいよいよ塗装の工程に入り、完成形のキューとなる。
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●最終チェック&MUSASHI完成
塗装までの長い工程を経たMUSASHIは最終的に仕上げ室に送られ、ここで最後のチェックが行われる。まずは塗装が仕上がったバット、シャフト全体のほんの僅かな汚れやホコリなども見逃さないようにチェックし、もし必要となれば手作業で丁寧に取り除く。
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その後にはスペシャリストの目と手による本当の最終チェックが行われる。もう一度シャフト、バット単体、そして、繋いでキューとなった状態で曲がりがないか、音鳴りなどがないかを確認。重量をチェックして最終調整が終わると、製作スタートから長いものでは2年ほどの時間を経てきたMUSASHIが完璧な姿となって完成する。
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ここまで3回にわたってアダムジャパンのキューメイキングの現場を紹介してきたが、1本のMUSASHIに注ぎ込まれている、アダムジャパンのスペシャリスト一人ひとりの経験と知識、そして卓越した技術という魂を感じていただけたのではないだろうか。
『【特別企画】アダムジャパンの今!』、次回はいよいよアダムジャパンが一丸となって生み出したMUSASHI最新モデル『矢倉』と『雁木』、さらに単体での発売も間もなくとなる最新シャフト『M.Fuji23』を詳しく紹介していく。
(※今回の『キューメイキングの現場から〜仕上げ編〜』で紹介した各工程の取材映像は近日アップの予定です)